「テンソルは行列のことです」、大学の授業で言われた言葉…
工学系分野では、まさにこの意味で通用することが多いです。
テンソル表記に慣れないうちは冷静に対処できる魔法の言葉!!
ただ、\(\epsilon_{ijk}\)といった三階テンソルのようなものが出てくると、数学的の視点から理解しないと一筋縄にはいかなくなることにも遭遇するはずです。
数学的定義
まずは行列とスカラーとベクトルの関係を見ていきましょう。
確認ですが、行列は下記のように縦方向と横方向に2次元の面的に展開していくものですよね。
\begin{eqnarray}\left( \begin{array}{ccc} a_{11} & a_{12} \\ a_{21} & a_{22} \\ a_{31} & a_{32} \end{array} \right) \quad とか \quad \left( \begin{array}{ccc} 5 & 2 & 3 \\ 1 & 4 & 6 \\ 9 & 1 & 5 \end{array} \right) \quadとか.\end{eqnarray}
また、縦行列や横行列は下記のように1次元の直線的にベクトル表記で表記することも学校で習っているかと思います。
\begin{eqnarray} \left( \begin{array}{ccc} a_{1} \\ a_{2} \\ a_{3} \end{array} \right) \quad や \quad \left( \begin{array}{ccc} 5 & 8 & 3 & 1 & 2 \end{array} \right) \end{eqnarray}
さて、ここで面→直線→点と発想がつながるでしょうか。そう、点に該当するのがは\(1\times1\)行列のスカラー量になるのです。例えば
\begin{eqnarray} (a_{11}) \quad や \quad (3) \quad や \quad (1.32) \quad など\end{eqnarray}
とかけまして、あえて()でくくりましたが、1成分しかないのでわざわざ行列表示にすることないですよね。
では逆に行列は3次元的に展開できるのでしょうか。うん、僕らは3次元の世界に住んでいますので、立体上に数を並べていけばなんとか作れるのは想像できますかね。
ただ、紙に書くのが大変…汗
しかも、「4次元はぁ?5次元はぁ?」と質問攻めされたタジタジです…汗
\begin{array}{cccccc} 0次元(階)\quad & 1次元(階)\quad & 2次元(階)\quad & 3次元(階)\quad & 4次元(階)\quad & \cdots \\ \hline 点 & 線 & 面 & 空間 & ? & \\ \hline スカラー & ベクトル & 行列 & ? & & \hline \end{array}
ここで、行列のn次元(階)にも適用できるよう一般化されたのがテンソルなのです。\(a_{ijk…}\)と添え字の数だけ次元(階)数を増やすことで、表記を拡張していきます。「テンソルは行列のことです」と冒頭にありましたが、正確には「スカラー、ベクトルを含め行列を一般化したのがテンソル」なのです。
流体力学の定義
流体力学で出てくるテンソルには、さらにアインシュタインの総和規約「一つの項の中に同じ点字が2度使われる場合、その点字について空間次数分だけ和を取る」という条件で縛ることがあります。
んん~、逃げ出したくなる…が、とりあえず、頑張って嚙み砕いてみます(汗)
例えば、
\begin{eqnarray} \cfrac{\partial u_i}{\partial t}+u_j\cfrac{\partial u_i}{\partial x_j}=-\cfrac{1}{\rho}\cfrac{\partial p}{\partial x_i} \qquad i=1,2 \tag{1}\end{eqnarray}
という方程式があります。いつも通り行列表示すると
\begin{eqnarray}\left( \begin{array}{cc} \cfrac{\partial u_1}{\partial t}+u_1\cfrac{\partial u_1}{\partial x_1} & \cfrac{\partial u_1}{\partial t}+u_2\cfrac{\partial u_1}{\partial x_2} \\ \cfrac{\partial u_2}{\partial t}+u_1\cfrac{\partial u_2}{\partial x_1} & \cfrac{\partial u_2}{\partial t}+u_2\cfrac{\partial u_2}{\partial x_2} \end{array} \right) = -\cfrac{1}{\rho}\left( \begin{array}{cc} \cfrac{\partial p}{\partial x_1} \\ \cfrac{\partial p}{\partial x_2} \end{array} \right) .\end{eqnarray}
ん?、これだと\(2\times 2\)行列=\(2\times 1\)行列となるので成立しえない式になってますねぇ…
アインシュタインの総和規約に従うと、式(1)の移流項\(u_j\cfrac{\partial u_i}{\partial x_j}\)には\(j\)が2つ入っているため、次のような和と取った式になります。
\begin{eqnarray}\left( \begin{array}{c} \cfrac{\partial u_1}{\partial t}+u_1\cfrac{\partial u_1}{\partial x_1} +u_2\cfrac{\partial u_1}{\partial x_2} \\ \cfrac{\partial u_2}{\partial t}+u_1\cfrac{\partial u_2}{\partial x_1} +u_2\cfrac{\partial u_2}{\partial x_2} \end{array} \right) = -\cfrac{1}{\rho}\left( \begin{array}{cc} \cfrac{\partial p}{\partial x_1} \\ \cfrac{\partial p}{\partial x_2} \end{array} \right) ,\end{eqnarray}
または、これは
\begin{eqnarray} \cfrac{\partial u_1}{\partial t}+\sum_{j=1}^{2} u_j\cfrac{\partial u_i}{\partial x_j} = -\cfrac{1}{\rho}\cfrac{\partial p}{\partial x_i}\qquad i=1,2 ,\tag{2} \end{eqnarray}
とも書けます。式(2)を式(1)と比較すると\(j\)が\(\Sigma\)でまとめられた形式をしていて、実のところアインシュタインの総和規約といった新しい概念を持ち込まなくても、\(i=1,2\)に成分が割り当てられていることに注意して、単に\(\Sigma\)を付け足だすだけで式の形式が正しく表記することができます。
ちなみに、\(i=1,2\,\cdots\)の記述は略されることも多いですので、慣れないうちは\(i=1,2,\cdots\)は式の隣にあるのか一回一回試し書きしてみて確認して、面倒臭がらず\(\sum_{j}\)もしっかり書くとよいと思います。
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