圧力とは何か

雑談-流体力学

 熱力学ではボイルシャルルの法則\(\,pV/T=\rm const\)をもとに,圧力\(p,\,\)温度\(T,\,\)体積\(V\)が同列な変数と見なすことが多いかと思います.本ブログでは\(V\)の代わりに密度(質量密度)\(\rho\)を用いて,”\(p\)は\(T\)と\(\rho\)によって一意的に決まる\(p(T,\rho)\)の関係”とみていきたいと思います.

 さて,ミクロ的に流体を想像してみると(1)粒子として存在していて(2)各々が運動しています.

 (1)密度は粒子の詰まり具合を示すものなので,単位体積の粒子が増えると密度が上昇します.そして粒子数が増えるとより粒子同士の押し合いが強くなりパンパンな状態となって,結果圧力が上がるメカニズムになっています.特に常温の気体では,圧力と密度は比例して増減します.

 (2)温度は粒子の運動エネルギーを示します.粒子の運動が激しくなれば温度が上昇し,粒子同士の押付け合う力が大きくなり,圧力が上昇します.気体の場合は,比例関係で上昇します.

以上,(1)(2)の2つ要素によって圧力は変化し,\(p(T,\rho)\)とした関数とみることができます.

圧力はポテンシャルエネルギー

 内部エネルギーは分子の運動エネルギーとしましたが,圧力はポテンシャルタイプのエネルギーです.気体をゆっくり圧縮したあと,解放してあげるとポテンシャルの性質を持っているバネのように本に戻ります.

圧力がスカラー量,圧力勾配がベクトル量

圧力は単位体積当たりのエネルギーのため,体積積分
\begin{align}
\int p dV
\end{align}
は総エネルギーを意味します.基本的に静水状態の内部流体においては圧力はスカラー量で,学校では単位面積当たりの”力”とは習ったものの,根本的には方向は持っていません.ベクトル量の考え方が必要なのは固体の壁面上で考えるときです.

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とはいっても,例えば気体は圧力によって風が発生しますよね.圧力に勾配が生じると流動が発生し,差圧方向に沿って,力の意味合いを持った方向を持つ圧力が引き起こされます.数式からも,圧力勾配を体積積分するとガウスの定理に合わせて
\begin{align}
\int (\nabla p)dV=\int p\boldsymbol{n}dS
\end{align}
となります.流体中で発生する方向を持った圧力は圧力勾配のことだと肝に銘じておいてください.

 気象を例に考えみましょう.大気中では高層側の方が圧力が低く低層が高くなっていますが,それは低層の方が高層の空気の重みでギューと締め付けられるために起こっているのは分かりますよね.一方,大気中は層の高さにムラがあり,層が高いのが高気圧,低いの低気圧と呼びますが,ギューの締め付けが高気圧側が高いため,地表では高気圧から低気圧に向かって圧力差が生じ,圧力勾配力が発生して風速が段々大きくなっています.
 余談ですが,学校で気象の授業を習っていた時は,高気圧側では空気の層が重くて下に向かって風が生じて,地表にある空気は重量に余裕がある低気圧側に風が向かい,低気圧側で風が上に向かって,最終的に空気の層を高気圧と低気圧で差が縮まるように働くものと思っていました.実際のところ,気象現象は複雑であり,個人的には両方の効果が合わさっているものかなぁと思っています.ただ,わざわざ圧力を主役にして物理学的に説明するなら,前者の原理で圧力勾配によって風が吹く説明が妥当なはずです.

 それでは次に,なぜ固体上では圧力がベクトル量になるのでしょう.流体内ではある定点に等方向に力が生じ打ち消しあうためスカラー量になると説明しました.そのある定点上を,下図のように壁で分断してみましょう.すると,流体側の圧力だけが残り,壁に垂直な力以外は受けし合って,垂直な力だけが残ります.

 総括です.圧力はそもそも,単位体積の当たりの”エネルギー”であることからスカラー量であることは頷けるはずで,しかもそれは圧力勾配力を発生させるためのポテンシャルエネルギーの関係になっています.
 圧力は流体空間上はスカラー量で単位は\(\rm{[J/ m^3]}\),固体面上ではベクトル量で単位は\(\rm{[N/ m^2]}\),流体空間上における圧力勾配はベクトル量で単位は\(\rm{[N/ m^3]}\)となっています.

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