
熱力学では通常,閉じた系を前提に話を展開していきます.閉じた系とは,系の外と粒子の行き来のない状態です.つまり,閉じた系に注射器を射して空気を注入するような場合でさえ,「閉じてません!!」って怒られてしまいます(涙) そもそも,天気予報なんか考えると,観察したい対象は,シリンダーみたいに何か囲まれているわけではないですし,流体粒子は自由自在に行き来します.そう考えると,熱を有してる状態って開いている方が身近な気がします.本ブログで扱う熱力学は開いた状態をベースにしたいので,開いた系について一旦整理していきます.
開いた系について
気体の状態方程式には,圧力\(p\),体積\(V\),モル数\(n\),気体定数\(R\),温度\(T\)で成立していますが,開いた系だと粒子数が変動するため\(n\)が変数になり,系を決めることもありませんので,体積\(V\)に変わり密度\(\rho\)や比体積\(\rho^{-1}\)が主役になります.
さて,大気中の空気を例に開いた系をもう一度考えてみましょう.シリンダーのような区切られた空間ではないので,適当に微小な一区画に着目します(オイラーの視点).この区画は伸び縮みがなく,粒子も区画外と自由に行き来できるので,粒子数は常に変動します.つまり,区画内の質量が変動するため,単位体積当たりの質量を意味する密度\(\rho\)に着目することで使い勝手がよくなります.気象学や流体力学では,ある気体の質量を\(m\)とすると,\(nR=mR’\)と置き換えて\(\rho=m/V\)より,気体の状態方程式を
\begin{align}
p=\rho R’ T
\end{align}
として,使うことがしばしばあります.
その他の例
大気を例にあげましたが,他には以下のようなものもあります.
開いた系の例:定常流動系
系に2点管を通し,流体を定常的に流した問題です.粒子数や密度の変動に着目するというよりは,系が開いた状態のために入口と出口で差圧が生じ,差圧を加味したエネルギーの変化を考えるものです.産業応用色が強いため本ブログでは詳細を割愛します.

開いた系のメリット,デメリット
開いた系の方が\(n\)に縛りがないため汎用的ですが,閉じた系は粒子の出入りや増減がないために系内で質量保存が成立します.開いた代わりのこの大法則を手放すことになります.そのため,ラグランジュ的視点や比体積と言った,質量保存則を適用できる捉え方が存在します.
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